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TEAMクラプトンに聞く、「みんなでつくる」の可能性

 

2019年秋のオープンに向けて、築45年の建物をリノベーション中の河岸ホテル。京都青果合同の社員寮、朱雀寮としてかつて使用されていた建物には、新築にはない魅力と奥深さがあります。

日本の賃貸物件は、床を張り変えたり壁に穴を開けたりすることが出来ず、現状復帰が義務付けられているのが普通です。自分で手を動かし作品を生み出していくアーティストにとって、隅々まで仕上げられた既成の空間、いわゆる「与えられた」空間では、自由に創造力を発揮しづらいのではないか。そんな思いから、河岸ホテルでは現在、アーティストが住みながら制作を行い、自身の空間を自由に作り替えることのできる居住スペースをプロデュース中です。

現在河岸ホテルの内装工事を担当しているのが、みんなでつくろう(Do it togetherをテーマに、施主を巻き込んだものづくりに取り組むTEAMクラプトン。河岸ホテルの責任者はもちろん、一般のボランティアも参加して内装工事に関わりながら、オープンに向けて準備を進めています。

お金を出せば全て他人に任せられる時代に、なぜいま、「みんなでつくること」が大切なのでしょうか?代表メンバーの一人である山口晶さんに、河岸ホテルでの工事にかける想いについて、聞きました。

 


 

– TEAMクラプトンを作った経緯やメンバー構成について教えていただけますか。

TEAMクラプトンは現在、コアメンバー4人ほどで活動しています。僕以外は建築を学んでない、バックグラウンドが個性的なメンバーです。クラプトンが始まる前、雇われで仕事をしていたときに、平日にお金を稼ぎ、週末はボーリングや映画、買い物など、お金を消費する過ごし方に飽きていたというか、何か違和感を抱いていました。何か面白いことしたいな、と漠然と思いながら、庭に小屋を作るなど、自分の手を動かしてものづくりをする週末の過ごし方を模索していました。

そんな時、神戸で雑居ビルを一棟所有しているポールというアメリカ人に出会いました。ビルを改装してシェアハウスを始めたいけれども自分ではやれない、という状況のなか、「デザインを一緒に考えることができるし、考えたデザインを仲間と一緒に形にすることができる。人件費やデザイン費は要らないから、作業を一緒にする仲間のご飯代と材料費だけ負担してもらえないか」と交渉しました。ここから、雑居ビルのリノベーションプロジェクトが、週末の遊びとしてスタートしたんです。どのように進めようかとポールや現場に遊びに来てくれた人たちと話し合いながら作業を進める中で、「つくる」という行為が言葉の壁や国籍をも越えてコミュニケーションツールとなり、徐々にコミュニティが出来上がっていきました。大人の基地作りのようで、楽しかったですね。これがTEAMクラプトンの原点です。

こうした活動を週末の遊びとしてやっていくうちに、この雑居ビルのリノベーションをみたポールの友人などから徐々に仕事としての依頼が増えてきました。平日に私たちは他の仕事があったので、週末だけ、お施主さんや、お施主さんの友人知人と作業をしながらぼくらが複雑な部分に手を加え、平日はお施主さんたちだけで「宿題」としてペンキ塗りや簡単な木工作業をしてもらうようなプロジェクトの進め方をしていました。そんな風に、週末だけの仕事が、ありがたいことに口コミで紹介をしていただいて依頼が増えていきました。ひとり、また一人とクラプトン専業で仕事ができるようになり、2017年頃からメンバーみんな、クラプトン一本で仕事をしています。

河岸ホテルでは、現在責任者も汗をかきながら現場の工事に関わっていますね。お施主さんに「宿題を出す」というのが、通常の内装工事会社にはない特徴ですね。

一緒にお仕事をする条件として、「みんなでつくろう(Do it together)」を意識しているので、お施主さんにも必ず参加してもらいます。受注者・発注者の関係のなかで「サービスの提供者」にはなりたくない、と思っているので、オーナーさんと一緒に現場に立ってものづくりをすることで、より仲良くなって、長期的な関係性を築くことが多いです。そうすることで、受注者発注者という壁を超えて、よりいいものができると実感しています。

メディアでは美化されて紹介されることが多いですが、内装の工事って実は結構大変なんです。なので、きちんと理解してくださるお施主さんが大切です。一緒に汗をかいて、しんどい作業も一緒にやっていこう、という意気込みのある人と一緒にお仕事しています。

 

クラプトンが目指している社会像はなんなのでしょうか?

資本主義社会が過剰化している現在、お金を払って全てを他人にお願いする、というのが今の時代のあり方です。家は30年間でローンを組んで、誰かに作ってもらうもの、とみんなが思い込んでいる。これとは違うオプションがあまりないのが、息苦しいなと思います。私たちは、「他人にやってもらう」のではなくて、「自分で手を動かしてみる」ことの楽しさを、多くの人に伝えたい。そうすることで、過剰な資本主義社会に距離をおいて、本質的に必要な価値を見極められる人が少しでも増えたらなと思っています。

家具ひとつ取っても、木をやすったことがある人だったら、木の種類や、ある形を作りだすことの難しさや手間が分かりますよね。でもやったことがない人は、良い家具と大量生産の家具の違いがそもそも分からない。一度価値が分かれば、「これだけ高い技術と手間を職人さんにお願いするというのは、それほどの価値があるんだ」という本質的な価値がわかってきます。

日本の職人文化がどんどん無くなりつつある今、誰でもできるような作業を大工さんにお願いするのは勿体無い。簡単な作業はお施主さんを含めてみんなでやって、スキルが必要で手も育つ作業を専門家にお願いする、というプロセスが良いのでは思っています。

でもやはり、理屈以前に、「楽しい」ことが一番ですね。

「楽しい」がキーワードになっているのは素敵ですね。

ものをつくることも、それをたくさんの人と一緒にする「みんなでつくろう」ということも、もともとは「楽しい」から始まっています。でも、「楽しい」というのも、ただ楽というわけではありません。汗水流してみんなで一緒に準備をするこのプロセスが、文化祭のようで楽しいですよね。難しいし大変だけれども、達成感と意味のある仕事をする時、人は「楽しい」と思うのだと思います。

DITDo it togther)」という言葉をモットーにしていますが、この言葉に込めた意味を教えていただけますか?

「自分でやってみよう」という意味のDIYは日本でも浸透してきましたが、建築となると規模が大きく専門性も必要になってくるので、ひとりでやるには難しい。そこで、複数人で助け合いながら進められる関係性がある社会だと、大きなプロジェクトもやりやすいですよね。こうした持ちつ持たれつの関係性を、もっと増やしていきたいなと思っています。

– 山口さんから見た河岸ホテルの魅力は何でしょうか?

この先どう展開していくのか分からないのが、面白いと思っています。京都では他にもホテルが増えていますが、そのなかでも河岸ホテルは、ひとつひとつのプログラムの不確定さというか余白が特徴的です。設計している立場からするとガチガチに全てを決めたくなりますが、いい具合に決まってない感が、成長の伸び代があって良いですよね。

 

アーティストにとっての白いキャンバスのような、可能性のある空間ですね。

そうですね。例えば日本では、パブリックスペースは誰にも迷惑をかけてはいけないところですが、海外ではセカンドリビングみたいな使われ方がされるので、そもそも公共の「公」の考え方が違いますよね。きっとこの「キャンバスのような空間」は、至る所にあるはずです。

現在(20195月現在)まさに内装工事を進められているところですが、今どんな作業をしていますか?建物の魅力などもあれば教えてください。

地下がかっこいいですよね。窓の形も素敵です。今は5~6人で水道と電気を仕込んでいます。この建物はコンクリートなどの無機質な素材が中心なので、普段のプロジェクトと違い新鮮ですね。

ボランティアの皆さんにも、安全かつ正確に作業できる環境を整えようと思ってます。施工のプロというよりも、みんなで安全に楽しく、精度の良いものを作れる環境を提供するプロになりたいです。

最後に、河岸ホテルに何かメッセージを頂けますか?

オープンして終わり、ではなく、3年後、5年後、10年後という長期的なスパンでこれからどう成長していくか楽しみですね。

現代アートというものに、日本人は親しみがなさすぎるなと思います。文化や政治と同じように、アートはもっと人々の身近にあるべきです。河岸ホテルが、アートを人々の日常に持ち込む「装置」として機能するのではないかと、期待しています。

 

( 文:Mariko Sugita / 写真:Hanako Kimura ・ Mariko Sugita )


 

山口 晶(やまぐち あきら)

プロフィール:
1988年生まれ おとめ座。小学校卒業と同時に単独で渡英し、マンチェスター大学にて建築を学ぶ。手塚建築研究所にてインターン中に地震が起き、進学をやめ東北へ。そこで、コミュニティー系の魅力にはまる。studio-Lインターンを経て、高断熱高気密住宅の松尾設計室にて3年間修業。実務設計中にディテール図面を書きすぎ、造る欲動にかられ週末の活動としてTEAMクラプトンが2014年ごろ勃発。現在はクラプトン一筋となり施主巻き込み型の設計施工を行う。

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