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アーティストインタビュー: ”トラディショナルな書道から抜け出す”、國廣沙織の挑戦

2019年秋の正式オープンを直近に、徐々に活動を開始したKAGANHOTEL。今回は、新しくKAGANHOTELに入居をはじめた書道家の國廣沙織さんに、作品への思いや、入居にあたっての意気込みについて、話を聞きました。


 

– 書道をはじめたきっかけを教えて頂けますか?

小学1年生から、習い事として習字を始めました。特に志もないまま、遊びに行く感覚で、10年ほど習っていたと思います。書道を仕事にするなんて、その頃は夢にも思っていませんでした。

最初は普通の企業に就職したのですが、自分らしい生き方や仕事の仕方を、ふと立ち止まって考えることがありました。いつもはあまり自信がない性格なのですが、文字を書いている時は、堂々と自信を持てる自分に気が付いて。お祝儀袋や年賀状に名前を書くと、皆に喜ばれるのが誇らしくなりました。それで色々悩んだ末に、私の進むべき道は書道家もしれない、と気付いたんです。2008年のことでした。

– 現在は、どんなお仕事をされていますか?

文字を身につけれるアクセサリーのブランドを4年前から行なっています。そのほかに、ロゴやグラフィック、お店の看板のデザインや、書道教室も行なっています。

ジュエリー屋さんになりたいわけではないのですが、アクセサリーは文字の美しさを伝え、自分を多くの人に知ってもらう手段でもあります。今後は、書道家としての作家活動にもっと集中していきたいですね。

– 書道の潮流について、もっと詳しく教えて頂けますか?ご自身の活動は、どこに位置付けられるのでしょう?

トラディショナルな書道から抜け出して、オリジナルに変換してる点では、私の活動は現代アートとしての要素があるのかなと思います。

書道といえば、古くは中国に由来し、平安時代にひらがなが生まれた・・・・というのは皆さんもご存知かと思います。一般的に書道を学ばれる方は、1700年ほど前に中国で書かれた文字を模写するのが基本です。美しい究極の形がそこで完成しているので、その価値はリスペクトする一方で、私はのびのびとした作風に惹かれるタイプです。特に仮名文字の、余白の美に惹かれます。

影響を受けた書道家に、比田井南谷という方がいます。彼の、 『電のヴァリエーション』という作品が特に好きで。昭和20年に書かれたものですが、とても現代的ですよね。これを見たとき、書道でこんな表現もあるんだ、と驚きました。

藤原行成の書いた升色紙も、線の一本一本に芯があり、とても気に入っています。懐素の『自叙帖』の、のびのびとした作風も良いです。懐素は、お酒をいっぱい飲んで、酔っぱらってから一気に書く人です。狂草という作風なのですが、お酒一口、飲んでから書くような、既成概念をぶち破った自由な作風に憧れます。

百人一首をテーマにした作品

 

現在は、百人一首の歌ひとつひとつを読み解きつつ、モチーフの形に文字を合わせて書いてみたり、雨、雲、風などの言葉をテーマに作品を作っています。日本では、雨ひとつとっても、200種類ほどの言葉があるそうです。昔の日本人の繊細な言葉と美意識に憧れますね。

– インスピレーションが過去にありつつ、それを現代の文脈で表現されているのが面白いですね。國廣さんは今回、KAGANHOTEL入居にあたり東京から京都に移住されてきました。なぜ、京都という場を選び、KAGANHOTELに入居を決めたのでしょう?

やはり日本的なものが好きなんです。京都の街を歩くだけで、看板など素敵な文字を見つけることができて。伝統を守った街並みに、とても憧れがあります。

実は、人生で今まで2回、大きく環境を変えたタイミングがあって。

まず、英語を喋る度胸をつけたいと思い、2011年にロンドンに半年ほど住んでみました。後ろ盾をなくして、冒険をしたいと思ったんです。そのあと、広島から東京に上京して。どちらも新しい環境に単身飛び込んで、ゼロからのスタートでした。失敗しても自分で道を開きたいと思ったからだったのですが、結果、さまざまな人との出会いを通して、人生観が変わって。京都への移住、そしてKAGANHOTELへの入居も、成長するにはぴったりな環境だと思っています。

KAGAHOTELオープニングパーティーでのライブ制作の様子。

 

– 今後、KAGANHOTELで挑戦したいことはなんでしょうか?

今まで、作品の規模感でいうと小さなものが中心だったので、今後は大きくダイナミックなものを作っていきたいです。また、せっかく京都にいるので、京都での出会いをベースに、何か作品を作っていけたらと思っています。京都の職人さんとコラボレーションして、漆で作品をつくるなど、面白そうですよね。形にとらわれず、さまざまな実験を行なっていきたいです。


(文・写真 Mariko Sugita 写真:Hanako Kimura 作品写真:Saori Kunihiro)


 

國廣沙織(くにひろさおり)

広島県出身。6 歳より書を始める。2011 年より” 書” を基盤として活動を始め、ロゴ制作、書籍題字、映画内文字の提供、2014年〜書道に関するワークショップの開催、2015年〜ひらがなをモチーフにしたアクセサリーなど国内外で展開。2020SS TFWではファッションブランドのコラボレーションを行う。書道の枠組みに囚われない表現を目指している。

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